報告書

西安外国語大学での講演会

平成19年度3月25日〜26日

 

【初日】

国際言語文化研究科 平成18年度教育研究推進プロジェクト No.7(日本語教育研究フィールド開拓のための組織的展開)の一環として、上記の日程で西安外国語大学で講演会が行われた。3月25日は西安外国語大学雁塔キャンパスに於いて、小坂光一教授と滝沢直宏教授の講演が行われた。雁塔キャンパスでの講演は、西安外国語大学日本語系の教員および大学院生を対象に行われた。

 

小坂光一教授の講演「命題否定と助詞の前方移動」では、「どっちかがいなければパーティは始められない」などの日本語文における命題否定と述語否定の解釈の可能性や、「両方がいなければパーティは始められない」などの条件節が入った日本語複文における命題否定をめぐるさまざまな問題(統語構造と意味構造)について講義がなされた。滝沢直宏教授の講演「日本語研究・日本語教育とコーパス」では、コーパス(電子化された大量の言語資料)の定義、日本語を研究する上で、内省によっては捉えにくい言語の慣習的側面や周辺的言語現象などの研究にコーパスがどのように力を発揮するのかを日本語・英語の実例をもとに講義が行われた。日本語研究・日本語教育に常時携わっている西安外国語大学の教員・大学院生たちはどちらの講義も熱心に耳を傾け、質問討議に積極的に参加していた。日曜日であったにもかかわらず、講演会へ多数参加していただき、西安外国語大学の研究・学習への前向きな姿勢をかいま見ることができた。

 

【二日目】

3月26日は西安市郊外にある長安キャンパスにて、鷲見幸美助教授、杉村泰助教授、池田佳子講師の3名が講演を行った。平日であることもあり、西安外国語大学で日本語を学習する2,3,4年生の学部生約200名および教員を対象に講義が行われた。

 

鷲見幸美助教授の講演「類義表現の意味の違い ─同一の事態、事物をいかに捉えるか─」では、「この道をまっすぐ行くと、岐阜県に{出る・入る}」などの多くの例文を挙げながら、類義表現における話者の捉え方の違いが移動動詞の選択にどう顕れるのかを説明し、その上で認知言語学の基礎概念(カテゴリー、プロトタイプ、プロトタイプのメンバーなど)について講義がなされた。杉村泰助教授の講演「インターネットのWeb検索を利用した複合動詞の共起分析」では、「取り返す」と「取り戻す」はどう違うか、「聞き落とす」と「聞き漏らす」はどう違うか、また「〜返す」「〜落とす」「〜漏らす」などがどのような動詞と共起しやすいかをインターネットのWeb検索を利用して研究する方法について講義が行われた。また、将来関心を持ち研究を行う学生のために、Web検索を利用する際の注意点についてもアドバイスがあった。池田佳子講師の講演「日英比較:会話中に使用される英語の「oh」と日本語の「あ」の考察」では、インターアクションと文法の関係を考える意義について説明し、その後談話標識の一つである英語の「oh」と「あ」について談話データから比較を行い分析する、という研究例が提示された。3名の講演は、25日とは異なり、西安外国語大学の学生たちが「観衆」であったため、できるだけ分かりやすく研究のおもしろさを紹介することに重きを置いたものとなった。学生たちの反応は大変良く、講演後個人的に質問をする学生もいた。講演で使用された日本語には専門用語や難解な表現もあったはずであるが、日本語を学習する学生たちの理解力は非常に高く、教育の水準の高さを想像させるものであった。

 

二日間の講演会を通じて、西安外国語大学の教員や学生たちに直接会い対話する機会に恵まれた。名古屋大学の日本語教育や日本語研究に関心を持ってもらい、そしてそれらに携わる研究者(教員)たちがどのような人間かを知ってもらうことができた。

 

 

報告者:池田佳子