3.初級(クラス2)
3.1 学習者
初級クラスは、日本語学習歴のある学習者がコース開始日は4名、2日目からは3名(1名は中級クラスにクラス替えを希望)であった。
2日目以降3名の学習者の国・性別・学習歴は以下の通りである。
学習者A(オーストラリア、男)
高校で学習歴2年(1週間に2時間との回答。一年26週と想定し104時間程度)来日2度目。ひらがなもところどころ発音を間違え、読めない字もある。カタカナはほとん ど読めない。「日本語をどの様に使いたいか」に関しては「将来的にはビジネスで使える様になりたい。友人と日本語で話せる様になりたい」と答えている。また、4技能のうち、「聴解と会話」を練習することを希望している。
学習者B(カナダ、女)
3年前に学習(1週間に4時間との回答。6ヶ月で96時間程度)来日2度目。ひらがなは読めるがカタカナはほとんど読めない。フランス語学習歴あり。日系で、家庭内で は両親同士は日本語で話している。学習目標は「人前で自信を持って話せる様になりたい」と回答。また4技能については「会話・漢字(読み・書き)」と回答し、語彙数を増やしたい希望も持っている。
学習者C(オーストラリア、女)
大学で3年間。(1週間に5時間と回答。一年26週と想定し390時間程度)初来日。ひらがな、カタカナは全く問題なく読め、簡単な漢字も読める。学習目標は「仕事で使え る様になりたい。友人と話せる様になりたい。」4技能では「会話と漢字の読み書き」と返答。
3.2 担当実習生
原則として担当実習生が1コマずつ担当だが、初級に関しては日程の都合上、担当実習生の1名が2コマを担当した。
3.3 シラバス
使用テキスト「ひまわり」(前年度までのテキストを改訂したもの)
第1日目(8月7日)
L1「自己紹介をする」(学習項目)「私は〜です。」「から(from)来ました」「NのN」「趣味は〜です」「どうぞよろしくおねがいします」
第2日目(8月8日)
L2「注文をする」(学習項目)「Nもください」「お金の数え方」「(に)なります」「敬語(お〜になる)」
第3日目(8月9日)
L3「買い物をする」(学習項目)「イ形容詞(否定形)」「〜のほうがいい(です)」「(郵便物)〜まで」「〜を〜まい」(こ、ほん)と〜を〜まいください」「ええ。」
第4日目(8月10日)
L4「道をきく」(学習項目)「場所をきく」「〜お願いします」「動詞の活用(ます、ました、ません、ませんでした)」
第5日目(8月11日)
L5「電話をする」(学習項目)「もしもし、N(学校)の○○ですが」「○○先生いらっしゃいますか」「メッセージおねがいします」「電話番号は***−(の)○×××です)」「留守番電話にメッセージを入れる」
第6日目(8月16日)
L6「不調を訴える」(学習項目)「ナ形容詞」「〜たいです」「〜たいんですが」「体調を崩して早退を申し出る」「電話で今日の授業の欠席を伝える」
第7日目(8月17日)
L7「誘いと断り」(学習項目)「誘いの表現「−ませんか」」「誘いの表現「−から−ませんか」」「誘いの表現「−ましょう」」「受諾と断りの表現」
第8日目(8月18日)
L8「お礼をいう」(学習項目)「終助詞「ね・の」」「応答「うん、うん」「そう」」「すごい」「やりもらい」
3.4 担当実習生の反省
第1日目(8月7日)
・コースの一番はじめの授業で、クラスのレベルをきちんと把握できていなかった。
・クラスのレベル設定を低くしていたため、2コマ分の教案を1コマで終えてしまった。 残りの時間はディスカッションにあてたが、やはりはじめの授業は予想外のことも起こ り得るので、そのようなう場合も想定してもっと柔軟に対応できる教案を作るべきだった。
第2日目(8月8日)
・ なるべく目で見て楽しめる教具を作るようにした。
・ 学習者の能力をつかみきってなかったため、予定より教案が早く終わってしまった。
第3日目(8月9日)
・準備不足と寝不足で、授業のテンポが悪くなったり、教案から目を離せなかった。
・会話の練習のとき、教科書を閉じてやるように指示をだしたが、教師自身も教科書をみることなく、その会話をすることができなかった(覚えていなかった)。ネイティブである教師ができないのに、それを学習者にやるように指示をだすべきではなかった。
・学習者の日本語レベルをつかむことができなかった。コース開始2日間の様子から、一番最初に設定していたレベルよりも高いという印象を受けたので、高めの設定でシラバスをつくったが、それをすべてこなすことができなかった。
4日目(8月10日)
・まず、前提として初級既習クラスを設定したこと自体は良かったが学習項目及び達成目標が妥当であったか、という問題点があったと思われる。
.このクラスの生徒にとって授業内容がやさしすぎたのではないか。
.結局やろうとしたことが生徒達にわかっていることが多くて教案どおりにいかず、前半は時間が余ってしまった。
.このクラス用に新たな学習項目を作成すべきではなかったか。
.授業において地図を導入したが、地図の使用は妥当であったか。
(実際に地図で場所を指し示す場合、まだ導入していない表現もでてきて混乱させてしまった)
.人数が少なかったのでできなかったが、ロールプレイでみちをきく、という実際の雰囲気をだせるような工夫があればよかった。
第5日目(8月11日)
・授業は学習者A、Bに焦点を当てたものにするとCには退屈になるので、会話練習も少し長めにし、Cを中心に進めた。Cは積極的に授業に参加し、A、Bへの説明(英語)も必要に応じてしてくれていた。しかし、会話自体が少し長く、丁寧語も入ったりと、新規な要素が多かったので、A、Bには負担が大きかった様であり、最後までテキストから目を離せずにいた。もう少しテキストなしで話せるまで練習するべきだった。
・もう少し多様な電話の場面を設定した方がよかった。
第6日目(8月16日)
・質問の仕方が難しかった。学習者に「どうして〜」や「どうのように〜」といった説明を求めるような質問を行った場合、学習者が答えきれずに、母語で話すことがあった。学習者の日本語レベルにあった質問を行うことが必要である。
・教室内において、学習者の使用言語をコントロールするのが難しかった。学習者間、また学習者から実習生への発話において英語が用いられることがあった。
・難しかったのは、このクラスは学習者の日本語レベルに差が大きくあったことである。質問の仕方をコントロールするなど、レベル差が見られるクラスにおいて教師はどのようにクラスをコントロールしたらいいのか。
第6日目(8月17日)
・授業中次にすることの指示を先に板書してから進んだため、学習者の不安を多少ほぐすことができた。
・少し静かなクラスであったが、個人情報(誕生日など)を聞き出す手段で発話量をふやすことができた。
・一回欠席した学習者のために短い時間を使って練習させておいたので、無理なく全員で新しい項目の練習ができた。
・オーストラリアでは大きい声で話さない方が上品であるという文化が知らなかったため、オーストラリアからの学習者に音量を高めて話してもらっていた。
第7日目(8月18日)
・1時間目は誘いの表現を練習したが、つい反復練習が多くなってしまった。また2時間目は会話テープを聞いてもらって聴解の練習をした。しかし聴解の練習を続けて長い時間したため学習者を疲れさせてしまった。同じ練習ばかりするのではなく、バラエティー豊かな練習を用意するべきだった。
3.5 特記事項
・テキスト「ひまわり」は、'97、'99年度のテキストに基づき、アンケート調査で分かった意見もある程度反映させたもので、英訳のネーティーブチェックもすんだので、より 良いテキストに仕上がったと思われる。このレベルぐらいまでならテキストを大いに利用するとよいと思う。
名古屋大学大学院国際言語文化研究科
日本言語文化専攻