稲垣俊史

Shunji Inagaki

2009年スタバにて




私の研究は、(1)第二言語習得のメカニズムについての研究、(2)第二言語習得研究の外国語教育への応用についての研究に大別される。

(1)第二言語習得のメカニズムについての研究  

この種の研究は、いかに人間が第二言語を習得するかを明らかにし、そこから、人間の認知と言語の関係、ひいては人間の心に光を当てようとするものである。もちろん、これらの基礎研究が、効果的な外国語教育・学習を考えるうえでの基礎資料になることは言うまでもない。 私のこの分野の研究は、「第二言語における意味概念と文法形式のマッピングの習得」に最も集中している。例えば、

1.「AがBに何かを[移動させる/所有させる]」という意味概念構造を持った、英語の与格交替 (John gave the book to Mary <-> John gave Mary the book) の第二言語習得研究

2.「Aが(Xの動き方で)Bに移動する」という意味概念構造を持った、英語、日本語の移動表現 (John walked to school / ジョンが学校に歩いて行った) の第二言語習得研究

3.「物体/物質の区別」に関係する、英語の可算/不可算名詞 (cups vs. water) の習得研究

などがこれに当たる。意味概念と文法形式のマッピングには、普遍的な部分と、言語間の差異がみられ、言語と認知・思考との関係を考えるうえで、大変興味深い分野である。第二言語習得において、このマッピングの学習は大変困難であることが明らかになってきており、なぜそうなのかを探究することが、第二言語習得のメカニズムの解明、さらには人間の言語と認知の関係の解明に貢献することが期待できる。言い換えると、この分野の私の研究は、認知科学の一分野としての第二言語習得研究と言える。

(2)第二言語習得研究の外国語教育への応用についての研究  

外国語教育の最大の関心事は、いかに外国語習得のプロセスを効率よく促進するかということであり、このプロセスの解明を目指す第二言語習得研究が、効果的な外国語教授法・学習法の開発に貢献することは明らかである。このような視点から著した私の研究業績には、第二言語ライティング能力の指標として有効であると考えられる尺度を提案した共著書、リキャスト(暗示的に与えられる誤りの訂正を含むフィードバック)の効果を検証した論文、「第二言語習得の成功にはどのくらいの時間が必要か?」を考察した論文、「どうすれば英語ができるようになるか?」を考察した講演、などがある。これらによって、第二言語習得の成功には何が必要かが特定され、効果的な外国語教授法・学習法が具体化されつつある。


1. 著書

1) Wolfe-Quintero, K., Inagaki, S., & Kim, H.-Y. (1998). Second Language Development in Writing: Measures of Fluency, Accuracy, and Complexity (Technical Report #17). University of Hawai'i: Second Language Teaching and Curriculum Center.

2) Inagaki, S. (2010). Transfer and Learnability in Second Language Argument Structure: Motion Verbs with Locational/Directional PPs in L2 English and Japanese. Vdm Verlag. Available at amazon.co.jp

2. 論文

1) 稲垣スーチン・稲垣俊史 (2014).「英語力がつく授業を目指して―Story Retellingの試み―」『言語と文化』(大阪府立大学高等教育推進機構)第13号 pp. 21-27.

2) 福田純也・稲垣俊史 (2013). 「上級日本語学習者による目的を表す「ために」と「ように」の習得―「ために」の過剰般化は中国語話者に特有か―」『日本語教育』第156号 pp. 31-44.

3) Inagaki, S. (2013). Syntax-Semantics Mappings as a Source of Difficulty in Japanese Speakers' Acquisition of the Mass-Count Distinction in English. Bilingualism: Language and Cognition. Advance online publication. doi:10.1017/S1366728913000540

4) 稲垣俊史 (2013). 「テイルの二面性と中国語話者によるテイルの習得への示唆」『中国語話者のための日本語教育研究』 (中国語話者のための日本語教育研究会) 第4号 pp.29-41.

5) 稲垣スーチン・稲垣俊史 (2013).「英語多読の読みの速度に対する効果― Beglar, Hunt, & Kite (2012) の批評」『言語と文化』(大阪府立大学高等教育推進機構)第12号 pp. 53-58.

6) 稲垣スーチン・稲垣俊史 (2012).「"Timed Repeated Readings"を通じて見る英語多読授業の読みの流暢さに対する効果」『言語と文化』(大阪府立大学高等教育推進機構)第11号 pp. 13-17.

7) 稲垣俊史 (2011). 「中国語話者による日本語のテンス・アスペクトの習得について―アスペクト仮説からの考察―」『中国語話者のための日本語教育研究』 (中国語話者のための日本語教育研究会) 第2号 pp. 15-26.

8) 稲垣スーチン・稲垣俊史 (2011).「日本の大学における通年の多読授業の効果に関する実証的研究」『言語と文化』(大阪府立大学総合教育研究機構)第10号 pp. 103-109.

9) 稲垣俊史 (2010). 「中国語話者による日本語の移動表現の習得について―英語話者と比較して―」『中国語話者のための日本語教育研究』 (中国語話者のための日本語教育研究会) 創刊号 pp. 28-40.

10) 稲垣スーチン・稲垣俊史 (2010).「多読は効果的である―日本の大学英語教育におけるさらなる証拠―」『言語と文化』(大阪府立大学総合教育研究機構)第9号 pp. 49-53.

11) Barner, D., Inagaki, S., & Li, P. (2009). Language, Thought, and Real Nouns. Cognition, Vol.111, No. 2, pp.329-344.

12) 稲垣俊史 (2009). 「中国語を母語とする上級日本語学習者による目的を表す「ために」と「ように」の習得」『日本語教育』第142号 pp. 44-54.

13) Inagaki, S., & Barner, D. (2009). Countability in Absence of Count Syntax: Evidence from Japanese Quantity Judgments. In S. Inagaki, M. Hirakawa, Y. Hirakawa, H. Sirai, S. Arita, H. Morikawa, M. Nakayama, & J. Tsubakita (Eds.), Studies in Language Sciences (8): Papers from the Eighth Annual Conference of the Japanese Society for Language Sciences. Tokyo: Kurosio. pp. 111-125.

14) 稲垣スーチン・稲垣俊史 (2009).「英語多読授業の効果―ミシガンテストのセクション別得点の伸びから―」『言語と文化』(大阪府立大学総合教育研究機構)第8号 pp. 35-43.

15) 稲垣スーチン・稲垣俊史 (2008).「日本の大学におけるグレイデイッド・リーダーズを用いた英語多読授業の効果に関する実証的研究」『言語と文化』(大阪府立大学総合教育研究機構)第7号 pp. 41-49.

16) Inagaki, S. (2006). Manner-of-Motion Verbs with Locational/Directional PPs in L2 English and Japanese. In R. Slabakova., S. Montrul & P. Prevost(Ed.), Inquiries in Linguistic Development. Amsterdam: John Benjamins. pp. 41-68.

17) 稲垣俊史 (2006). 「第二言語習得研究と第二言語としての日本語習得研究」『言語文化学研究』(言語情報篇)(大阪府立大学人間社会学部言語文化学科)第1号 pp. 13-29.

18) Inagaki, S. (2005). How Long Does It Take for Japanese Speakers to Learn English? 『言語と文化』(大阪府立大学言語センター)第4号 pp. 19-29.

19) Inagaki, S. (2004). Motion Verbs with Goal PPs in English and Japanese as Second Language. 『言語と文化』(大阪府立大学言語センター)第3号 pp. 29-64.

20) Inagaki, S. (2003). Japanese Learners'Acquisition of English Motion Verbs with Goal PPs. In S. Wakabayashi (Eds.), Generative Approaches to the Acquisition of English by Native Speakers of Japanese. Berlin: Mouton de Gruyter, pp. 17-39.

21) Inagaki, S. (2002). Motion Verbs with Locational/Directional PPs in English and Japanese. Canadian Journal of Linguistics, Vol. 47, No.3/4, pp. 187-234.

22) Inagaki, S. (2002). Japanese Learners' Acquisition of English Manner-of-Motion Verbs with Locational/Directional PPs. Second Language Research, Vol.18, No.1, pp.3-27.

23) Inagaki, S. (2001). Motion Verbs with Goal PPs in the L2 Acquisition of English and Japanese. Studies in Second Language Acquisition, Vol.23, No.2, pp. 153-170.

24) Inagaki, S., & Huang, S. (2001). L2 Acquisition of Manner of Motion Verbs with Directional PPs: A Pilot Study. 『松本憲尚先生退官記念論文集』pp. 51-63.

25) Inagaki, S. (2001). Motion Verbs with Locational/Directional PPs in English and Japanese. McGill Working Papers in Linguistics, Vol.15, No.2, pp. 37-79.

26) Inagaki, S., & Long, M. H. (1999). Implicit Negative Feedback. In K. Kanno (Ed.), The Acquisition of Japanese as a Second Language. Amsterdam: John Benjamins. pp. 9-30.

27) Long, M. H., Inagaki, S., & Ortega, L. (1998). The Role of Implicit Negative Feedback in SLA: Models and Recasts in Japanese and Spanish. The Modern Language Journal, Vol.82, No.3, pp.357-371.

28) Inagaki, S. (1997). Japanese and Chinese Learners' Acquisition of the Narrow-Range Rules for the Dative Alternation in English. Language Learning, Vol.47, No.4, pp. 637-669.

29) Inagaki, S. (1993). The Acquisition of Constraints on the Dative Alternation in English by Native Speakers and Adult Japanese Learners of English: the Role of Associative Mechanisms. University of Hawai'i Working Papers in ESL, Vol.12, No.1, pp.1-24.

30) 稲垣俊史 (1992).「習得順序の研究に関する一考察―これまでの概観と今後の課題―」『中国地区英語教育学会研究紀要』 No.22, pp.257-269.

31) 稲垣俊史 (1992).「A Study on the Multidimensional Model: With Special Reference to English Interrogatives」『中国地区英語教育学会研究紀要』No.22, pp.127-138.

32) 稲垣俊史 (1992).「‘The Multidimensional Model’に関する一研究―第二言語としての英語疑問文習得に焦点を当てて―」『教育学研究紀要』(中国四国教育学会) 第37巻, 第二部 pp.115-120.

33) 稲垣俊史 (1991).「外国語習得の自然な順序とその応用について―過去の研究を振り返って―」『中国地区英語教育学会研究紀要』No.21, pp.163-172.


3. 書評

1) 稲垣俊史 (2012). 『ことばの習得−母語獲得と第二言語習得』 鈴木孝明・白畑知彦(著)(くろしお出版, 2012) 『英語教育』61巻 (4号), 大修館書店 pp. 91-92.

2) 稲垣俊史 (1991). Tarone, E. Variation in Interlanguage.(Edward Arnold, 1988)『英語教育研究』(広島大学英語教育研究会)第34号 pp.132-135.

3) 稲垣俊史 (1991). Ellis, R. Instructed Second Language Acquisition: Learning in the Classroom. (Blackwell, 1990)『英語教育研究』(広島大学英語教育研究会)第34号 pp.128-131.

 

4. 学会および社会における活動

2012年

1) 稲垣俊史・福田純也「上級日本語学習者による目的を表す「ために」と「ように」の習得 ―「ために」の過剰般化は中国語話者に特有か―」 (J-SLA 2012ポスター発表)(開催地:法政大学)(2012年6月2日)

2) 稲垣俊史「第二言語習得(SLA)研究の魅力 ―「やさしい日本語」で論文を書くために―」 (招待講演)(開催地:一橋大学)(2012年12月23日)

2011年

 稲垣俊史・蓮池いずみ「日本語話者による英語の空間表現の習得における母語の影響 ―英語話者の日本語習得データと比較して―」 (J-SLA 2011ポスター発表)(開催地:文教大学)(2011年6月11日)

2010年

1) 稲垣俊史「中国語話者と英語話者による日本語の移動表現の習得」日本第二言語習得学会(J-SLA)2010(開催地:岐阜大学)(2010年6月12日)

2) 稲垣俊史「私の第二言語習得研究 ―受身文の習得を例にとって―」名古屋大学国際言語文化研究科オープンキャンパス(開催地:名古屋大学)(2010年7月3日)

3) 稲垣俊史「中国人日本語学習者の格助詞の誤用に関する一考察」第6回名古屋大学ホームカミングデイ・国際言語文化研究科学術講演会 (開催地:名古屋大学)『日本語教育研究のフロンティア』(2010年10月16日)

4) 稲垣俊史「第二言語習得研究とは何か―タメニとヨウニの習得を例にとって―」第四回『日・中・韓日本言語文化研究国際フォーラム』 パネルセッション: 大学院における言語・文化教育の新展開 (開催地:中国・大連大学) (2010年10月24日)

2009年

1) Inagaki, S. Why Can't You "Be Eaten Your Cake"? Overgeneralizations of the Passive by Japanese EFL Learners at Different Proficiency Levels. Paper presented at the 9th conference of the Japan Language Association (J-SLA 2009)(開催地:Tokyo, Japan)(2009年5月30日)

2) 稲垣俊史「生成文法に基づく動詞の自他の習得研究について」中国語話者のための日本語教育研究会第13 回研究例会 (開催地:大阪府立大学)(2009年7月25日)

3) 稲垣俊史「第二言語習得理論から見た中国語母語話者の自他の習得」2009年度日本語教育学会秋季大会パネルセッション (開催地:九州大学箱崎キャンパス)(2009年10月11日)

4) 稲垣俊史「日本語母語話者にとって英語の可算名詞と不可算名詞の区別はなぜ困難か」日本英語学会第27 回大会シンポジウム (開催地:大阪大学豊中キャンパス)(2009年11月15日)

5) 稲垣俊史「中国語話者による日本語の移動表現の習得について」中国語話者のための日本語教育研究会第14 回研究例会 (開催地:名古屋大学東山キャンパス)(2009年12月19日)

2008年

 稲垣俊史「目的を表す「ために」「ように」の習得」中国語話者のための日本語教育研究会第9 回研究会 (開催地:奈良天理大学)(2008年4月5日)

2007年

1) 稲垣俊史「日本語話者による英語の可算/不可算の区別の習得 −難しさはどこからくるのか− 」J-SLA 夏季セミナー  (開催地:群馬県草津セミナーハウス) ( 2007年 8月28日)

2) Inagaki, S. and Barner D. Japanese Speakers'Acquisition of the Mass/Count Distinction in English: Where Does the Difficulty Lie? Paper presented at the 12th International Conference on the Processing of East Asia Related Languages (PEARL 2007) (開催地:Tainan, Taiwan ) (2007年12月 29日)

2006年

1) 稲垣俊史「可算/不可算名詞の区別の習得について」日本第二言語習得学会(J-SLA)2006秋の研修会の公開講演会 (開催地:キャンパスプラザ京都) ( 2006年10月29日)

2) 稲垣俊史「どうすれば英語ができるようになるか?−第二言語習得研究の成果を踏まえて−」大阪府立大学人間社会学部公開講演会 (開催地:大阪府立大学) (2006年10月7日)

3) 稲垣俊史「目的を表す「ために」「ように」の習得について−データ収集の方法にも触れて−」中国語話者のための日本語教育研究会第4 回研究例会 (開催地:奈良天理大学)(2006年7月29日)

4) Inagaki, S. and Barner D. Lexical and Syntactic Sources of Individuation: Evidence from Quantity Judgment in Japanese and English. Paper presented at the 8th Annual International Conference of the Japanese Society for Language Sciences (JSLS2006) (開催地:東京国際基督教大学) (2006年6月11日)

2005年

  稲垣俊史「第二言語習得とJSL」中国語話者のための日本語教育研究会第1回研究例会 (開催地:園田女子大学) (2005年8月6日)

2002年

 Inagaki, S. Transfer and Learnability in Second Language Argument Structure: Motion Verbs with Locational/Directional PPs in L2 English and Japanese. 博士論文口頭試問の発表会 (開催地:McGill University, Canada) (2002年9月14日)

2000年

 Inagaki, S. Japanese Learners'Acquisition of English Motion Verbs with Locational/Directional PPs. Paper presented at the Second Language Research Forum (SLRF2000) (開催地:University of Wisconsin-Madison, USA) (2000年9月8日)

1999年

 Inagaki, S. Argument structure in SLA: The Case of Motion Verbs with directional PPs. Paper presented at the the 12th World Congress of Applied Linguistics (AILA1999) (開催地:東京早稲田大学) (1999年8月2日)

 


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Last update 02/20/2014 by Shuchun