2007年 日本イギリス児童文学会中部支部 春の例会

日時:5月27日(日)13:00〜17:00(受付13:00〜)
場所:中京大学 4号館426教室 (地下鉄鶴舞線八事5番出口、4号館西館2階の一番奥)
プログラム:
13:00〜13:30 受付
13:30〜14:10 研究発表1 木原貴子 名古屋女子大学 文学部英語英米文化学科
       「ヴィクトリア朝の少女像-『ガールズ・オウン・ペー パー』の挿絵に見る少女の姿と女性の役割-」   
14:20〜15:00  研究発表2 美濃部京子 静岡文化芸術大学 文化政策学部 国際文化学科 
       「アメリカに渡ったJack Tales」 
15:10〜15:20 総会(理事候補の承認及び大会実行委員会の設立)
15:30〜17:00 講演 川島昭夫 京都大学 人間・環境学研究科
       「路上呼び売り(street cries)の世界」
17:30〜 懇親会 芳賀

講演要旨
「路上呼び売り(street cries)の世界」 川島昭夫
 道を往来する人や、家の中で家事をしている人に呼びかけて、物の販売した り、サービスを提供したりする路上の営業で、自分がいまここにいるという合 図として上げる声を、英国ではCryと呼んでいた。一種の告知であるから、売 る物の種類によって、Cryの内容や抑揚・旋律も決まっている。当人の姿格好 も、一目で識別できるように特徴が強調されている。このような物売りたちの 姿を、特有のCryとともに集めて印刷したものが、一枚刷りのブロードサイド から、連作版画、トランプ、子供向けのチャップブックなどとして刊行されて いる。エフィメラルな民衆的出版物の中に、Street Criesものともいうべきジ ャンルを形成しているといえるだろう。LondonのStreet Criesだけでなく、Yorkなどの地方都市やNew Yorkなど外国の都市の名を冠したStreet Criesも存在する。
 また、作曲家オーランド・ギボンズの歌曲を初め、Criesは、バラッドや劇 中の歌などにもとりいれられ、パブの看板や焼き物などに描かれ造形されたも のも含め、はばひろい民衆の表現活動の主題となった。
 路上の呼び売りは19世紀後半には衰微し、Cryも一種の騒音として規制を受けることになる。現在では夕刊売りや、オープン・マーケットの野菜売りなど に、その名残をとどめるにすぎない。すでに、19世紀後半には、郷愁をかきたてる古き良き時代の風習として回顧する出版物があいついで出現もしている。
  この講演では、牛乳売りの女性や古着売りの男性などの路上での営業を、イメージと実態の両方向から探ってみたい。


研究発表1要旨 「ヴィクトリア朝の少女像-『ガールズ・オウン・ペーパー』 の挿絵に見る少女の姿と女性の役割-」 木原貴子

 近年、ヴィクトリア朝の社会や文化の研究において、雑誌は重要な資料とし て注目されている。当時の雑誌の大きな特徴の一つとして、「挿絵」が付けら れていることが挙げられる。とりわけ1860年代は挿絵の黄金時代と呼ばれ、質 的にも量的にも充実していた。その後、そうした傾向は児童文学にも普及し、少年少女を対象とした雑誌、しかも挿絵付きの雑誌が数多く登場した。挿絵は、作者と読者の間に位置し、伝達すべき思考や感情をより明確にイメージ化 し、供給する機能をもつものである。その意味で、青少年期の読者を対象とした雑誌に挿絵が多用されたことは容易に納得できることである。そこで、本発 表では、ヴィクトリア時代に出版された挿絵付きの少女雑誌『ガールズ・オウ ン・ペーパー』に焦点を当て、そこに掲載された挿絵から当時の少女像を考察 していきたい。
  性別役割(ジェンダーロール)の遵守が厳しく求められていた当時の社会 の中で、「娘」としての少女たちはどのように描かれているのだろうか。さらに、彼女たちの理想像である、「家庭の天使」(“Angel in the House”)である「良き」妻、「良き」母はどのように表現されているのだろうか。その姿は、そうなることが期待された彼女たちにどのような影響を与えたのであろうか。一方、挿絵の中には、こうした時代の風潮とは相容れない少女や女性の姿を描いたものもあると考えられる。そうした挿絵の意味や表現方法なども分析していきたい。


研究発表2要旨 「アメリカに渡ったJack Tales」 美濃部京子

 アメリカの伝承といえば、土着のネイティブ・アメリカンやアフリカ系の伝 承をまず思い浮かべる人が多いと思うが、イギリスからわたった人々が持って いった文化の中には、その伝承も含まれていた。
 19世紀になって、アメリカ東部のアパラチア山地を中心とする地域がフォー クロアの宝庫として知られるようになるが、そこはイギリス、特にスコットランド系住民が住みついた地域だった。イギリス本国に続いて、アパラチア山地地方でもバラッドをはじめとするフォークソングの調査をしたCecil Sharpは、イギリス本国では途絶えてしまったと考えられていたバラッドの伝 承が海を隔てた新大陸でまだ生きているのを目にして驚いたという。その後、Sharpのフォークソングの収集に刺激を受けて、Richard Chaseが同じくアメリカ南東部の山地地方で民間伝承の収集を始め、「ジャック話(Jack Tales)」と呼ばれる昔話群が伝承されているのを発見する。
 ジャックの話といえば、イギリスの昔話としてよく知られているが、それが移民とともにアメリカへ渡って、どのように変化をしていったのか。よく知られている「ジャックと豆の木」を中心に扱いながら、その特徴などについて考えてみたい。

過去の講演会記録

「フランスにおける児童感の変遷」講演会のご案内

演題;「狡猾から純真へー近世近代フランスの子ども向け読み物における子ども像の変遷?」
講師:愛知県立大学外国語学部 教授 天野知恵子
日時:9月30日(土)15:30〜17:00
場所:名古屋大学全学教育棟 1F 第一会議室(地下鉄名城線名古屋大学駅1番出口)


講演要旨:「赤ずきん」などの話で知られるシャルル・ペローの物語集は、17世紀末につくられたものだが、そこには、人食い鬼をだまして危地を逃れる子どもの像が描かれている。ところが18世紀後半の子ども向け読み物には、もはやそのような子どもは登場しない。当時売れ行きの良かったベルカンの子ども向け雑誌『子どもの友』にはたとえば、愛情深い親のもとで素直に純真に育つ子どもたちが描かれている。18世紀のいわゆる「子どもの発見」をさかいに、子ども向け読み物に描かれる子ども像は変化した。近代の子ども向け読み物の主役となるのは、純真な子どもたちである。話の舞台も、鬼や魔法の出てくる幻想的な世界から、平穏だが単調な日常の家庭生活に変わる。
 だがフランス革命期には、子ども向け物語に新たな舞台が加わった。話を劇的にするため、政争や災害といった現実的で過酷な運命が子どもたちを待ちかまえるのである。純真ゆえに無力で、生きのびるための知恵を持ち合わせない子どもたちは、そこで悲劇的な死を遂げる。フレヴィルの『有名な子どもたちの生涯』は、そうした話を集めた物語集である。そして19世紀の子ども向け物語は、純真な子ども像を前世紀から引き継ぎながら、話の舞台は現実の社会になる。主人公の出生の秘密や、愛する者たちとの死別・離別・再会、見知らぬ地域をめぐる旅などが、話をより面白くする仕掛けとして用いられ、数々の危機を経た子どもたちを待つ幸福な結末が、物語をより穏やかにする。エクトル・マロの『家なき子』や、学校教育の場で多く使われた『二人の子どものフランス巡り』など、19世紀後半にはばひろく読まれた物語には、そうした特徴を見出すことができる。ここには近代の子ども向け読み物がたどり着いた、一つの型がある。

「中世ウェールズ伝承」

1.

演題:The Battle of Camlan: Arthur/Mordred and Native Welsh Tradition
「カムランの戦い:アーサー/モードレッドとウェールズ伝承」

(講演は英語、日本語通訳つき)

講師:Dr Ian Hughes (連合王国ウェールズ大学ウェールズ語科主任講師)

日時:平成18年6月25日(日)14:00〜16:30(受付開始13:30)

場所:慶應大学三田キャンパス・研究室棟1階 A・B会議室

2.

演題1:『マビノーギオン』と『古事記』

講師:松本 達郎氏(獨協大学名誉教授)

演題2:Medieval Welsh Narratives: Tales, Episodes, or Texts?

「中世ウェールズ伝承:説話?エピソード?それともテクストか?」

(講演は英語、日本語通訳つき)

講師:Dr Ian Hughes (連合王国ウェールズ大学ウェールズ語科主任講師)

日時:平成18年7月1日(土)13:30〜17:00(受付開始13:00)

場所:姫路獨協大学・西館5階 第3会議室

★日本ケルト学会・語りと身体研究会共催

『くるみ割り人形』の変容   

講演者:鈴木晶 法政大学国際文化学部教授・早稲田大学大学院客員教授
日時:4月15日(土)16:00〜17:30
場所:名古屋大学全学教育棟 1F 第一会議室(地下鉄名城線名古屋大学駅1番出口)

講演内容
「くるみ割り人形」は数多い古典バレエの中でも群を抜いて人気がある、言い換えると、上演回数の多いバレエです。原作はドイツ・ロマン主義の作家E・T・A・ホフマンですが、バレエのもとになったのは、デュマによるフランス語訳です。まず原作とフランス語訳(翻案)との間にズレがあります。次いで、もちろんホフマン=デュマの小説と、マリウス・プティパによるバレエ台本との間には大きな違いがあります。さらに、1892年に初演された後、何度も改訂が繰り返され、そのたびにこの物語に対する再解釈がおこなわれています。とくに、主人公の少女をどう捉えるか、少女の体験をどう捉えるか、をめぐって、コレオグラファーたちはあれこれ新たな解釈を試みてきました。このバレエは、絵本や児童書に相当する側面をもっていますので、センダックが舞台美術を担当したプロダクションなども紹介しながら、いわば「児童文学としての『くるみ割り人形』」についてお話ししたいと思います。

講演者紹介
著書: 『踊る世紀』(新書館)
   『グリム童話/ メルヘンの深層』(講談社現代新書)
   『フロイト以後』(同上)
   『翻訳はたのしい』(東京書籍)
論文: 「機械と舞踊/ロシア・アヴァンギャルドとバレエ」
     (「ユリイカ」1983年1月号)
   「思索するニジンスキー/「手記」とトルストイ主義」
     (「ユリイカ」1983年11月号)
   「デコールとしての頭部」("is" 31号)
   「テニスをする牧神」
     (「ユリイカ」1986年4月号) 
    その他多数