(2002年度大学院講義シノプシス)
鈴木繁夫(2002年4月11日)
(1)視覚作品(イメージ・像・絵画)を手がかりにして、女性の形姿がどのように変化したかを追う。またその変化を引き起こす要因を、定型パターンや様式史から説明する。
☞日向秋子『ヴィ−ナス変貌』(白水社, 1982年)
☀松本滋『父性的宗教 母性的宗教』(東京大学出版会, 1987)
☀林道義『母性崩壊』(PHP研究所, 1999)
(2)認識論(人間が世界をどういう仕組みで捉えているか)から、秩序世界において女性がどのような位置を占めるのかを説明する
☞吉本隆明『改訂新版 共同幻想論』 (角川文庫, 1982年)
古代神話や文献、彫刻、図像の想像的解読→
父権制以前に愛と平等の母権制社会が存在した
[
父権社会は歴史の産物。相対化しよう。ガイアの時代がやってくる
☞ミルチャ・エリア−デ『豊饒と再生:エリア−デ著作集
第3巻』(久米博 他 訳せりか書房, 1981年)
☞ミルチャ・エリア−デ『大地・農耕・女性 比較宗教類型論』(堀一郎 訳 未来社, 1977年)
☀ヨハン・ヤーコブ・バッハオーフェン『母権論:古代世界の女性支配に関する研究 その宗教的および法的本質』(岡道男, 河上倫逸 監訳 みすず書房,
1991-1995)
☀木村重信『ヴィ−ナス以前』(中公文庫, 1982年)
☀矢島文夫『ヴィ−ナスの神話』(美術出版社, 1975)
女性的なるものを心理学や人類学などの知見を利用して普遍化し、それをいくつかのパターンにわける。→
自分はどんな母親をもっているか
[
父権社会に適応できないのは母源病
☞E・ノイマン『グレート・マザー−−無意識の女性像の現象化』(福島章 他訳,ナツメ社,1983年)
生活のあらゆる場面を支配する男性優位→
女性は抑圧されていた
[
父権社会は歴史の産物。相対化しよう。ガイアの時代がやってくる
☞エヴァ・C・クールズ『ファロスの王国 : 古代ギリシアの性の政治学』(中務哲郎, 久保田忠利, 下田立行訳 岩波書店, 1989)
☀桜井万里子『古代ギリシアの女たち―アテナイの現実と夢』(中公新書, 1992年)
聖書に登場する女性たちの活動、イエスが女性たちにとった態度は、福音書記者、書簡執筆者がそれぞれ属していた、その時代の教団の考え方や立場を反映している。
→最終的には、
キリスト教(パウロ)には女性差別はなかった
[
キリスト教は父権社会確立に手を貸したわけでない。ユダヤ教にその責任はある。
☞荒井献『新約聖書の女性観』(岩波書店 1988年)
☀絹川久子『聖書のフェミニズム 女性の自立をめざして』(ヨルダン社, 1997年)
☀遠藤周作『聖書のなかの女性たち』(すえもりブックス, 1999年)
契約思想によって人間は個人化し、近代的になった。→
キリスト教(パウロ)のおかげで母性的中世カトリックから離脱できた
[
カトリックは古い、プロテスタントは近代原理。女性的なるものを抑圧しよう。
☞大木英夫『ピューリタン−−近代化の精神構造』(中央公論社,1968)
「母性愛」≠本能
「母性愛」=本能は、近代が作り出した父権社会による幻想
母性という幻想
[
母性を「問題」化して、
(1)世界を構築しない
(2)競争から共生社会へ
☞エリザベート・バダンテール『母性という神話』(鈴木晶 訳 筑摩書房, 1998)
☞リーアン・アイスラー『聖杯と剣―われらの歴史、われらの未来』(野島秀勝 訳 法政大学出版局, 1991)
☀上野千鶴子 『女は世界を救えるか』(勁草書房,1986年)
(2002年度大学院講義シノプシス)
鈴木繁夫(2002年4月11日)
l 発掘された像:ヴィレンドルフのヴィーナス (木村重信 ??ギュプタス)
l 民俗学の調査:母系社会の存在 〈類似の法則〉 (バッハオーフェン フレーザー ディードッリヒ[1])
l 神話の文献:テミス (エリアーデ ハリソン)
l 力動心理学:未分化の無意識→普遍的な人類の心性 (ノイマン)
以上の四つを総合化して、ひとつの信じられうる「定説」をつくる。
定説その(1)
先史時代[ノマド的時代]においては地母が支配的であった。
農耕の定着とともに地母は豊穣神となる。
そして父権の支配が優勢になると、地母―豊穣神は抑圧されていく。
定説その(2)
アジアの豊穣神 VS ギリシアの処女美神木村195
キリスト教の家父長制 VS 民主的個人平等主義
本来の女性的なものが、今では抑圧されている
l 馴致化された神話への依存
(ブルフィンチ=オウィディウス型の「説話におさまる脆弱な神々」
神話の定本化がおこっている。→因果による論理化が行われる⇔類似メタファー(アレゴリカル)思考)
l 自ら外部に立てるという信頼
時代とともに人間の意識は、あらかじめ人間活動に内蔵されている発展様式段階をへることになる。
例
フレーザー:呪術→宗教→科学
ヴァザーリ:
木村:大母神→母と子→(子が消えて)処女としての女神→(子が復活して)子をいつくしむ母179
しかし自分たちもその様式段階のある一時期にいることにたいして、鈍感にしか対応しない。
l キリスト教に対する不信感:流行語と問題
一般に流布したダーウィニズムは、神による天地創造をそのまますなおに肯定するような考え方を否定する方向ではたらいた。[My First Son]
その一方で教会の世俗化も急速に進んでいった。
神にかわる新たな絶対普遍的な象徴への依存対象をさがしている。
そういう像しかみていない。
むしろ各論者がかならずふれているように、たとえば両性具有像も同じように古くから存在している。
いやそもそも性の区別立てというものを、人間は普遍的にやってきたのだろうか。
男女という区別は有徴のものだったのだろうか
コインキデンティア・オッポシトールムという発想も錯綜していたのではないか。
ギリシアの中にも、アポロ的とディオニュソス的という豊穣(非理性)と理性という二項対立がそのまま折り返されて内包されている。
母性の別な面としての〈恐るべき母〉を、ちょうどディオニュソス神を飼いならすように、馴致化している。
8フレーザー彼は人類の思考様式進化の再構成を図り、呪術→宗教→科学という3段階の図式を提唱した。呪術とは類感と感染の2原理により世界を操作しようという誤てる技術であり、その失敗の自覚から超越的なものの前にひれ伏す宗教が生まれ、またさらには人間の能力の限界内で論理的・実験的に世界に対処せんとする科学が生まれたというのである。社会進化論にもとづく過度の一般化・単純化、個々の資料の扱いの恣意性。
8ジェーン・ハリソン Jane H.
ファン・ヘネップの2人は、儀礼の形態と構造に関する研究において意義ある貢献をなした。古典学者ハリソンはギリシアの祭式と劇を例にとりながら、芸術、とりわけ演劇は古代の祭式に発するものであり、したがって儀礼(祭式)と演劇(芸術)は形態からは相同のものであり、広い意味での宗教性の有無にその相違があるにすぎないと主張した。
8ミルチャ・リアーデ, Eliade, Mirceaルーマニア 1907-86歴史家,比較宗教学者.ブカレスト生まれ.カルカッタ大学でインド哲学とサンスクリット語を学ぶ(1928-31).ブカレスト大学の宗教史と哲学の講師となる(1933-39).第2次世界大戦中は外交官を務め,その後ソルボンヌ大学やシカゴ大学で教鞭をとった(1946-48,1957-85).世界の宗教を体系的に研究した先駆者.数多くの著書や論文がある.