個人主義とはどういうものか:サタンの独白とセクハラ女性の訴え

2001416

2002415

 

1. 中世か近代か?

 

時代の証言

A)        「ブルジョワジーが支配権を握った所では、封建的な、家父長的な絆を無慈悲に引き裂いて、人と人とのあいだに、むき出しの利害、冷たい『現金勘定』のほかのなんの絆ものこさなかった。」マルクス『共産党宣言』(トーニー『宗教と資本主義の興隆』下巻199ページ)

 

B)        「理性もそういうものだが、ものには段階がある。だから人々が身分に応じた義務を果たすのは正当である。だが、自分よりも目下のものを苦しめたり、軽蔑したりすることは、憎むべきことである。」(トーニー『宗教と資本主義の興隆』原文36ページ 注14

 

C)        「領主と小作人との間には、相互の愛情の絆があり、領主は小作人を子供のように慈しみ、小作は父親のように領主を愛した。」(トーニー『宗教と資本主義の興隆』訳上巻105ページ 注102

 

D)        「神が合法的にもっと儲る仕事を示した時、これを断わり、儲けの少ない方の仕事を選んだとすれば、天職の目的の一つに背いている。」(トーニー『宗教と資本主義の興隆』訳下巻161ページ)

 

 

 

2. ケーススタディ

2.1.                 サタンの独白(ミルトン『失楽園』4)(1667)

                           神に屈服する以外には

悔い改めの余地はないのだ。だがこの屈服という言葉を口にすることを、

軽蔑の念が、奈落にいる天使たちから受ける屈辱の恐れが、

私に禁じている。………….

…….さらば希望よ! 希望とともに恐怖よ、さらばだ!

さらば悔恨よ! すべての善は私には失われてしまった。

悪よ、お前が私の善となるのだ! お前の力によって、

私は宇宙を天上の王とともに分割し、少なくともその一部を

統治している。まったくお前のおかげだ。

 

 

2.2.                 アリス・ドリング(1271年)

アリスはウィリイアムが結婚契約を結んだと主張したが、ウィリイアムは争点を決定し、その契約が結ばれていないと主張した。弁論の過程でウィリイアムはアリスと肉体関係があったことを認めた。しかし契約が結ばれたという当日の第9時(現在の日没数時間前)から、翌日の第1時(日没直後)まで、

「私ウィリイアムはずうっとブルフォードにおり、そんな時間にウィンターバーンで結婚契約を結ぶのは不可能です」。

 

アリバイを崩すためにアリス側は、証人を立てる。シーリア(アリス側の証人)は、ウィリイアムが次のような宣言をしたと証言をする。

「私ウィリイアムは汝アリスをともに生きるかぎり妻とし、そのことに私は忠誠を誓います」。

また、この宣言がなされた時間は日没前、場所はジョン・ル・アンカールの家で、家の西側の部屋にあるベッドの前。その場にいあわせたのは、結婚契約をする二人、証人シーリア、マーガレット、その姉だけだったという。

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下級裁判所では勝訴するが、上告審で敗訴。

 

一人の女性が裁判で男を訴えることができた。

一人の人間(法的人格体)として認知されている。

 

 

3. 個人主義

3.1.                 個人とは世俗化から生まれた:名声への強迫観念

肖像画・個人彫像・個人賛歌が多く作られたルネッサンスà個人名をもつことの誇り

 例 『アテネのタイモン』11場 詩人と画家の対話

 

3.2.                 個人化とは宗教的なものだった:自律・自決への執着

カトリック教会からプロテスタント教会へという宗教改革à契約志向

 シェイクスピアは宗教改革時代の作家だった。

 


 

 

4. テキスト ボックス: 新世界発見による富の増大富と個人主義

4.1.                 個人とは世俗化から生まれた:名声への強迫観念è

肖像画・個人彫像が多く作られたルネッサンスà個人名をもつことの誇り

 

テキスト ボックス: ピューリタンはジェントリー階級であった
 


4.2.                 個人化とは宗教的なものだった:自律・自決への執着è

カトリック教会からプロテスタント教会へという宗教改革à契約志向

 

 

4.3.                 個人主義とは最初に誰がいったのか:社会制度から自由になろうとする欲求

テキスト ボックス: 富の均一分配トクヴィル                                                                                                                 ê

 

 

 

4.4.                 サタンの独白(ミルトン『失楽園』4)(1667)

                果てしない感謝の膨大な負債を

払えば払うほどたまっていく背負いきれない負債を一挙に始末できる、

と思った。神からいかなる恩恵をたえず受けているのかも

忘れ、感謝を知る心というものは負い目を悟ることによって

負い目をおわない、いやむしろ払っている

 

4.5.                 アリス・ドリング(1271年)

イングランド中農の生活


 

5. 中世か近代か

5.1.                 時代の証言

E)         「ブルジョワジーが支配権を握った所では、封建的な、家父長的な絆を無慈悲に引き裂いて、人と人とのあいだに、むき出しの利害、冷たい『現金勘定』のほかのなんの絆ものこさなかった。」マルクス『共産党宣言』(トーニー『宗教と資本主義の興隆』下巻199ページ)

 

F)         「理性もそういうものだが、ものには段階がある。だから人々が身分に応じた義務を果たすのは正当である。だが、自分よりも目下のものを苦しめたり、軽蔑したりすることは、憎むべきことである。」(トーニー『宗教と資本主義の興隆』原文36ページ 注14

 

G)        「領主と小作人との間には、相互の愛情の絆があり、領主は小作人を子供のように慈しみ、小作は父親のように領主を愛した。」(トーニー『宗教と資本主義の興隆』訳上巻105ページ 注102

 

H)        「神が合法的にもっと儲る仕事を示した時、これを断わり、儲けの少ない方の仕事を選んだとすれば、天職の目的の一つに背いている。」(トーニー『宗教と資本主義の興隆』訳下巻161ページ)

 

 

 

5.2.                 中世と近代の区別立て

 

中世(政治・宗教の未分化)

近代

 

問題解決

宗教的規準

 

 

政治理論

神学的な鋳型

(コルプス・クリスティアーヌム)

 

 

社会関係

人格的・親密・直接的

 

 

経済活動

自然経済→手工業→家計の維持

 

 

道徳的目的              

社会の中に啓示

 

 

自然法

私利への道徳的制約

 

 

財産

相互扶助の手段

 

 

 

 

 

 

 

経済の大変貌:再分配社会から市場経済(資本主義の興隆)へ

 

再分配社会:共同体の支配者が共同体の成員からいったん富を集め、それを分配する。

市場経済:「ただ市場のみによって統御され、調整される経済」となり、この市場の「自己調整力」によってそこには安定的な経済秩序が実現されうる。(ポランニー『大転換の経済学』)

 

資本主義の興隆:財産権が過当に尊重され、社会目的に奉仕するという財産の本来の目的が忘れ去られた。(トーニー『宗教と資本主義の興隆』)